特別記事
エスノグラフィーの方法的特質とは何か―社会学の立場から考える
黒田 由彦
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1名古屋大学大学院環境学研究科社会学講座
キーワード:
異文化
,
参与観察
,
ラポール
,
シカゴ学派
,
インタビュー
Keyword:
異文化
,
参与観察
,
ラポール
,
シカゴ学派
,
インタビュー
pp.530-535
発行日 2011年8月15日
Published Date 2011/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100568
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エスノグラフィーの発祥
エスノグラフィーとは,日本では「民族誌」と訳されるが,人類学や社会学において,特定の集団や社会の生活様式を,フィールドワークを通して組織的に描き出す方法およびその成果を意味する。別の言い方をすれば,エスノグラフィーとは,調査者が自分たちとは異なる文化や社会を対象として,自らその社会に飛び込み,そこで生きる人々との生身の交渉を通して資料を集め,対象である文化と社会を記述する営みおよびその営為の結果として産み出されるモノグラフや報告書をさす。
かつて人類学にとって「異文化」とは,調査者が住む先進産業社会から遠く離れた「辺境」の地に住む民族であった。例えば,人類学における古典的なエスノグラフィーであるB. マリノフスキーの『南太平洋の遠洋航海者』(1915)の舞台は,ニューギニア島東沖のトロブリアンド諸島であった。
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