第5回日本看護医療学会学術集会 シンポジウム
「看護」を解き明かすために—あなたはなぜその方法を用いるのですか?
生化学的・分子生物学的実験手法を看護研究にどう生かすか ニューフロンティアはあるのか
米田 雅彦
1
1愛知県立看護大学・栄養代謝学
pp.28
発行日 2003年12月25日
Published Date 2003/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7009200216
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周知のことであるが、生化学や分子生物学の研究は実験を用いたものである。そして、実験とは理論または仮説が正しいかどうかを、人為的な操作により実際に確かめることである。生命体で行う場合、ヒ卜が最終目的であっても、理論を確立するには動物、特にマウスなどが人為的操作の場として選ばれる。その利点は遺伝子が均一であることである。それに対して看護が対象にしなければならないヒトは動物で言う野生型であり、同一であることは双子などの例を除けばありえない。すなわち、遺伝子の発現が異なることであり、局面での生理的な反応が異なることを意味する。このような状況で仮説を証明していくことは、ばらつきの問題があり、非常に困難なことであろう。
ところが、ヒトゲノム計画がほぼ終了し、遺伝子の全容が明らかになったことが一つの可能性をもたらしたと思っている。遺伝子に小さな変異(1塩基変異や反復配列)が起こることがある。細胞分裂に伴うDNAの複製時や紫外線などによる損傷での修復時に、ある一定の確立で変異は起こっている。特に1塩基変異が次世代に受け継がれ、ある程度の頻度に達すればそれは突然変異とは言わず、1塩基多型(SNP、スニップ)と呼ぶ。ある意味で個性のパーツである。よく知られたものでは、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼのSNPがある。酒に強いかどうかを左右するし、最近では肝臓ガンのリスクも示唆されている。このような遺伝子多型の情報が今盛んに収集されている。
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