第5回日本看護医療学会学術集会 シンポジウム
「看護」を解き明かすために—あなたはなぜその方法を用いるのですか?
看護研究におけるマルチメソッド・アプローチ
川口 孝泰
1
1筑波大学社会医学系(看護医療科学類)
pp.25-26
発行日 2003年12月25日
Published Date 2003/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7009200214
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1.看護研究とは・・・
看護研究とは、看護の実践に資する新しい知識を発見し、それらを看護学の体系のなかに位置づける営みである。看護は、技術(art)であり科学(science)である…と言われている。この場合の科学とは、客観的で普遍的、かつ理論的であり単純化され、認識できるものである。これは科学的な営みの代表とされる科学知である。しかし技術(art)とは、そのような科学的価値性とは相対にあるものとされている。つまり、主観的でその個人固有のものであり、実践的で経験を大事にし、常に変化する複雑な対象に働きかけることを重要としている。これを技術から生まれた技術知とする。(図1)
看護研究は実践科学として、科学の知と技術の知の両方の知の相互作用によって高まるような体系化がなされる必要がある。これまで、学問の世界では、技術知は科学知よりも、学問的価値の低い存在として扱われてきた感がある。つまり、図2で示すような手続きが本来の科学的追求であるとするならば、仮説を生み出すまでの過程を、これまでの科学は非常に軽いものとしてきたともいえるのである。しかし、演繹的な手法を先行した科学の推進によって、画一的で単純化されたものに対する矛盾が生じ始めたとき、対象の個別性の理解や複雑系に対する学問的な問いかけが重要視され、改めて看護の実践科学としての重要性と看護研究の方法論が問われ始めている。
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