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1.はじめに
「災害は忘れた頃にやってくる」という故事も、今は通用しないほど、大地震や大洪水のニュースが世界各地から伝えられ、活断層が全国隈無く走っているわが国では、常に地震のリスクを意識した自助・共助を心がけておかなければならない状況におかれている。
平成19年6月に発生した中越沖地震による東京電力柏崎・刈羽原子力発電所が想定外の地震に被災したことなども関係し、原子力災害に対する社会的な関心が高まり、自然災害に伴う人為的な災害としての原子力災害等との複合災害についての対応も必要になってきた。このような中で、災害看護に係わる看護職も、原子力・放射線災害に関する特殊性についての知識等を深め、期待される的確で迅速な対応がとれるようにしておくことが必要とされる。
そこで、本稿では、原子力・放射線災害あるいは事故の基本的事項について記述し、理解の一助になればと考えている。
現在、日本には、17カ所55基の商業用の原子力発電炉があり、さらに、核燃料施設や、再処理施設などの原子力関連施設も稼働している。また、治療用の放射線装置を設置した医療機関や、研究・教育用の放射線装置や放射性物質を取り扱っている施設が全国各地に5000カ所以上もある。
平成16年に制定された「国民保護法」には、武力攻撃などによる原子力災害も想定されており各県毎の対策の立案が義務づけられている。また、横須賀港、佐世保港、沖縄のホワイトビーチはアメリカの原子力艦の寄港地となっている。
核燃料や放射性物質の輸送なども考えると、原子力・放射線は、国民の一人ひとりにとって大変、身近かな存在である。
さらに、医療の領域では放射線や放射性物質が日常的に利用されているにも拘らず、看護職の放射線に関する基本的な知識が不足しているために、時として適切ではない対応がとられていることの現状を残念に思うことにしばしば遭遇する。放射線・放射性物質の医療利用をさらに促進していくためにも、看護職のみなさまに放射線に関する知識を深めていただきたいと思う。
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