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はじめに
2011年3月11日14時46分頃,三陸沖を震源に,国内観測史上最大のマグニチュード9.0の地震が発生した。この地震により発生した津波で,東北地方と関東地方の太平洋沿岸部は壊滅的な被害を受けた。福島第一原子力発電所の原子炉は地震発生直後に停止したが,1~3号機の緊急炉心冷却装置の稼働用非常電源が津波被害を受け,故障した。政府は原子力災害対策特別措置法に基づき,原子力緊急事態を宣言した。12日には1号機で水素爆発,13日には3号機の燃料棒が露出,14日には3号機で水素爆発が発生した。水素爆発による原子炉建屋の損壊で大量の放射性物質が漏洩し,重大な原子力事故に発展した。このため,周辺一帯の住民はいまだに長期の避難を強いられている。
弘前大学(以下,本学)では,3月13日の「弘前大学放射線安全機構」緊急会議の席において,文部科学省より被ばく患者受け入れや避難住民の汚染検査等への協力要請があった場合,積極的に対応するとの基本方針を確認し準備を進めた。この方針を受け,本学大学院保健学研究科では医学部附属病院放射線部と協働し,避難住民の汚染検査に従事するサーベイチームの編成と,派遣準備を行なうことが決定した。翌14日には文部科学省からの協力要請を受け,「弘前大学被ばく状況調査チーム」の派遣を決定した。その後,3月15日の第1次隊を皮切りに,7月末の第20次隊まで,教職員延べ365名を送り出した。また,警戒区域に指定された20km圏内の住民の一時帰宅を支援する「一時立ち入りプロジェクト」が5月から開始されたことに伴い,ここにも人材を派遣することを決定し,第11次隊まで延べ202名を派遣した。
私たちはこの2つのプロジェクトに数日ずつ参加し,原子力災害における看護活動の実際を経験するという貴重な機会を得ることができた。ここでの経験を共有化し,後世に語り継いでいくことが看護専門職の責務であると考える。
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