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I.緒言
今や,おおよそ2人に1人が一生のうちにがんと診断されている 1).そして,がんに関する情報は,インターネット,テレビ,新聞や雑誌などさまざまな媒体で発信されているが,誤解を招く情報,商用目的のエビデンスのない情報なども混在し,必要な情報,正しい情報を得にくい状況でもある 2)〜4).
2003年と2013年に実施された全国のがん体験者対象の調査では,この10年でがん薬物療法に関する悩みや負担が顕著に増加したことが示された 5)6).これは,分子標的治療薬やがん免疫治療薬などの新規抗がん薬の登場,術前や術後の補助療法としてのがん薬物療法の増加,多剤併用療法による副作用の複雑化に加え,通院治療への移行などが背景にある.つまり,多くのがん薬物療法を受ける患者が自宅で副作用を経験し,すぐに医療者に対応してもらえない状況や,副作用対処をはじめとした自身が受けるがん薬物療法に関する情報を的確に得られない環境が悩みや負担につながっていると考えた.
がん薬物療法に関して情報資源となる製薬企業作成の患者向け冊子は,単剤療法では多くあるが多剤併用療法ではほとんどなく,また,これらの内容は,治療スケジュールや注意点,副作用症状など充実している一方,具体的な副作用対処は十分とは言えない 7).そこで,所属施設ではがん薬物療法の治療説明の際,職種ごと(医師,薬剤師,看護師)に説明書を用いており,ほかの施設の多くもこのような形で対応しているのが現状である.この方法は,各職種が考える『患者が知っておかなければならない情報』を反映するが,互いに重複した情報で説明表現の齟齬が生じたり,複数の説明書により患者が必要な情報を見つけにくくなったりするなどの欠点がある.また,インターネット上では多職種協働で作成したと思われる説明書も散見するが,製薬企業作成の冊子と同様に具体的な副作用対処の記載が十分とは言えず,その運用においても各職種が共通利用しているかどうか不明確である.患者は治療に対して大きな不安をかかえており 8),説明表現の齟齬や複数の説明書による情報の内容・量の差異が,いっそう患者の不安につながることが容易に想像できる.そのため,各職種が共通利用可能で,これからがん薬物療法を受ける患者の治療への理解を助け,役立つ具体的な副作用対処の記載が充実した情報支援ツールが必要だと考えた.
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