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Ⅰ.緒 言
倦怠感は,がん患者およびサバイバーにもっとも高い頻度で生じる苦痛な症状の1つである1)2).深刻な倦怠感は,治療継続を困難にし,生存率に悪影響を及ぼしうるのみならず,治療終了後も長期にわたり家庭や職場での活動を妨げる可能性がある.よって,そのアセスメント,マネジメントは重要な医療の課題である.しかし,倦怠感はメカニズムが不明確で効果的薬物療法もないことや,合意された共通の定義が不足していることなどから,十分に報告,診断,治療されていない現状がある1)2).
がんに伴う倦怠感の定義で現在国際的に広く使用されているものは,National Comprehensive Cancer Network(以下,NCCN)の「最近の活動に合致しない,日常生活の妨げとなるほどの,がんまたはがん治療に関連した,辛く持続する主観的感覚で,身体的,感情的,かつ/または認知的倦怠感,消耗感」1)と,Assessing the Symptoms of Cancer using Patient-Reported Outcomes(以下,ASCPRO)の「がんである,あるいはがん経験のある人々の機能に負の影響を与える,パターンや程度において多様な,通常とは異なる疲労感」2)であろう.倦怠感のような主観的症状は,その症状をもっとも理解している患者の視点から測定する患者の自己報告による評価が適している1)〜3).患者報告アウトカム(patient-reported outcome,以下,PROと示す)とは,「医療者や他者による修正あるいは解釈なしに,患者から直接得る患者の健康状態に関する報告に基づく評価」であり3),近年臨床実践および研究において患者の経験を捉え,患者中心ケアを実現するために使用されることが増えてきている4)〜7).
一方で,研究や臨床で既存のPRO尺度を用いた結果を最大限保証するための課題も指摘されている3)4)8).研究,臨床実践いずれにおいても,既存のPRO尺度を使用する場合,その対象集団と目的に適切な尺度の選択が重要であり,尺度の測定特性(信頼性,妥当性)の中でも目標母集団や状態に特異的な内容妥当性の評価は重視される3)8).内容妥当性は,「その尺度が測定しようとする概念を実際に測定できる程度」と定義されており,尺度の項目が測定しようとする概念に十分関連し,その概念が目標母集団の視点を十分に反映していることを保証する3).既存のPRO尺度を研究や臨床で適用する際の内容妥当性の評価には,評価したい概念と尺度の概念枠組みの一致,項目作成時に目標母集団からの直接的インプットを含むことなどが必要とされる3)8).
これまで複数のがんに伴う倦怠感のPRO尺度が作成され,信頼性,妥当性が検証されてきたが,がんに伴う倦怠感PRO尺度のレビューでは,内容妥当性に着目したものは見当たらない.よって,本研究の目的は,日本で使用可能ながんに伴う倦怠感のPRO尺度特性を,一般的な信頼性,妥当性のみならず,特に内容妥当性に注目して明らかにすることである.臨床実践および研究に使用するがんに伴う倦怠感のPRO尺度を選択する際に,それぞれの尺度の内容妥当性およびそのほかの尺度特性(信頼性,妥当性)を理解し,検討するための基礎資料とする.
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