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Ⅰ.緒 言
乳がんは,日本の女性において最も罹患率が高いがんであり,患者の70〜80%はホルモン受容体陽性である1).これらの患者が術後補助療法としてホルモン療法を5年間継続すると,再発リスクが40〜50%低下し,死亡率を改善することが示されている2)〜4).しかし,このような治療効果がある一方で,ホルモン療法は,ホットフラッシュや関節痛,性機能障害,気分障害,倦怠感などの副作用を生じるとされ,QOLにも悪影響を及ぼすことが明らかとなっている5)〜7).
従来,ホルモン療法の治療期間は5年間とされていたが,タモキシフェンあるいはアロマターゼ阻害薬(以下,AI)の10年間の服薬により,その後の再発率および死亡率のさらなる低下を認め8)9),近年は治療期間を10年間へ延長することが推奨されている10).ホルモン療法の服薬アドヒアランスと無病生存期間の関係を調査した研究11)では,処方された薬剤の服薬率が90%未満の場合,再発や死亡のリスクが61%有意に増加するとされ,ホルモン療法の服薬アドヒアランスを維持することは,患者の長期生存を可能にし,予後を改善することが示されている.しかしながら,このようにホルモン療法の有効性が証明されているにもかかわらず,患者の約50%は5年間の服薬を遵守しないことが指摘され12)13),服薬アドヒアランスの維持,向上は,乳がん患者の支援において重要な課題である.
ホルモン療法の服薬アドヒアランスを調査した文献レビュー14)によると,服薬アドヒアランスを維持している患者の割合は,タモキシフェンでは41〜88%,AIでは50〜91%,薬剤の区別をしていないものでは46〜100%と,幅広く報告されている.このような結果の背景には,研究における服薬アドヒアランスの評価方法の多様性があり,均質的な結果が示されているとは言い難い.患者の服薬アドヒアランスには,年齢や収入などの個人要因に加え,ホットフラッシュや関節痛などの副作用,服薬に対する個人の信念,ソーシャルサポート,医療従事者とのコミュニケーションなど,さまざまな要因が影響していると考えられている15)〜17).また,服薬アドヒアランスに対する介入としては,ホルモン療法に関する情報提供や患者教育,医療者と患者のコミュニケーションの促進などが中心として行われているが18)19),これらについては,同種類の介入方法であっても,研究によって有意な結果を示すものとそうでないものがあり,未だ効果的な支援方法の特定には至っていない.
よって,本研究では,治療期間の長期化を踏まえ,患者の服薬アドヒアランスを維持,向上するための支援を新たに検討することを目的とし,ホルモン療法の服薬アドヒアランスにおける影響要因および介入に関する文献のシステマティックレビューを実施した.
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