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Ⅰ はじめに
科学技術の進歩に伴い,コンピュータや化学薬品をはじめとする多種多様な生産物としての科学の成果が医療に流用された.ことに生命支援分野としての医用工学には,その目的に生体機能代行補助技術,治療支援技術及び生体計測技術の3種類があるという(土肥, 2001).こうした生命支援に関連した科学技術が患者の救命にもたらす恩恵は,計り知れない.患者の救命に貢献する高度医療機器をはじめとするハイテクノロジーには,どのようなものがあるのだろうか.厚生労働省の特定集中治療室管理の設置基準では,集中治療室(intensive care unit;以下ICUと略す)に常備すべき器械として,挿管切開装置や人工呼吸器を含む救急蘇生装置・心細動除去器・ペースメーカー・心電計・ポータブルX線撮影装置・呼吸機能測定装置・ハートスコープを挙げている(平田, 1988).これを受けて,厚生労働省の認可を受けたICUでは,治療診断用機器として気道確保用器具・人工呼吸器・酸素療法器・ネブライザー・気管支ファイバースコープ・ペースメーカー・除細動器・微量輸液ポンプ・大動脈内バルーンパンピング(Intra-Aortic Balloon Pumping;以下IABPと略す)・人工腎等を,モニター用機器として,換気量計・呼吸ガス濃度計・血液ガス分析器・血圧測定機器・心電計・心拍出量計・深部体温計・パルスオキシメーター・ドップラー計・脳波計等を常備している.更に冠疾患集中治療室(coronary care unit; 以下CCUと略す)では心室補助装置・肺動脈血酸素飽和度連続測定モニター・心拍出量測定用コンピュータ等を常備していることが多い.
高度医療機器に関わる医療従事者には主として医師,看護師,臨床工学技士が挙げられる.医師は,高度医療機器を治療に適用する使用者である.臨床工学技士は,生命維持管理装置の操作及び保守点検を専門とするコメディカルスタッフである(厚生統計協会, 2001).このように,高度医療機器が多種多様化することに伴い医療スタッフが専門分化する中で,看護師が担う役割も変化している.高度医療機器に関与する看護師の役割には,患者に施された高度医療機器の安全な作動性を保証する機能やモニタリング機能等がある.上泉(1994)は,こうした看護の機能を,生命の維持のために患者の生理学的変化に応じて直接的に行うものとしている.また,高度医療機器は,非日常的かつ非人間的な印象や,体動制限やコミュニケーション手段の制限などが加わることから,患者には恐怖感や孤独感をもたらすとも言われている(Holland, Cason & Prater, 1997; Hupcey & Penrod, 2000).高度医療機器が施された患者に対しては,苦痛を最小限とする生命維持に貢献する看護が必要とされている.従って,高度医療機器に携わる看護師には,必然的に高度医療機器の操作とその機能を看護に生かしていくことと同時に,患者が救命と引き替えに受ける苦痛を最小限にするケアが求められよう.しかし,高度医療機器と看護師との関係における探究には,高度医療機器から受ける患者の苦痛を軽減するケアリングの重要性を指摘するものや高度医療機器がもたらす持続的で多様な情報を臨床判断に生かす看護師の思考を明らかにするものが多く,看護師が高度医療機器のどのような側面を引き受け,役割を担い実践しているのか,つまりハイテクノロジー看護について明らかにしている研究は十分とはいえない.加えて,ハイテクノロジー看護を具体的な看護師の実践として明らかにするための手がかりを得る資料が見当たらなかった.
そこで,本研究では,ハイテクノロジー看護という概念がもつ特徴とその有用性を明らかにすることを目的として,Walker & Avant(1995)が提唱した概念分析の手法を用いて分析を試み,高度医療機器に関与する看護師の実践について明らかにするための課題についていくつか見出したのでここに報告する.
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