第30回日本看護科学学会学術集会 基調講演
Translational Research: Connecting Evidence to Clinical Practice by Ruth Mulnard
スーディ神崎 和代
1
Ruth Mulnard
1札幌市立大学
pp.82
発行日 2011年6月20日
Published Date 2011/6/20
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- 文献概要
トランスレーショナルリサーチ(以下TR)の考え方としてはその過程をいくつかのブロックに分けて捉えることもできるが,新たな科学的発見と臨床の実践現場とのギャップを埋めることを意図した知識の伝達,あるいはヘルス関連政策やポリシーへの波及効果を意識した領域という捉え方もできる.簡単に表現すると,TRは人々への直接支援が提供される実践現場に役立つことを目的とした研究の形といえる.これまでの「ベンチからベッドサイド」といわれる研究は研究現場で産み出された新薬や医療機器(ベンチ)を臨床実践の場で(べッドサイド)テストをする,または試用してみるという形であった.つまり,製品・機器が研究の中心となってきた.しかし,TRは従来の研究の形を超えて,医療の質改善,ケア提供システムの調整などに連携し,研究者と実践者が双方向からコミュニケーションを図りながら最終的には地域の医療関係者や医療を受ける人々の行動の改善に繋がっていく研究方法であるといえる.
TRの基本型である1型はコントロールされた環境での人間を対象としたヘルスケアの新たな発見を指し,2型はコントロールされていない,あるいはコントロールが困難な環境における地域をベースにした研究である.3型は屡,実践中心のTRと呼ばれ,4型は患者へのケアに関わるポリシーについての研究に用いる.さらに広範囲に用いられる5段階モデルには基礎研究,パイロット研究・手法の開発,効能試験,効果試験,普及調査研究が含まれる.
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