巻頭言
科学的研究に思うこと
高木 廣文
1,2
1日本看護科学学会
2東邦大学看護学部
pp.1
発行日 2012年12月20日
Published Date 2012/12/20
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- 文献概要
『看護とはアートでありサイエンスである』と言われているように,本学会の名称には『科学』という言葉が含まれている.その専門領域に関する科学的な研究成果を掲載するのが,学会誌の主な役割である.この『科学』ということにずっと拘っている.つまり,『科学とは何か』という問いにはまってしまった.解答は簡単なようだが難しい.何かについて,それは科学的なのかと考え出すと,簡単には解答が出てこない.
多くの人がいろいろなことを言っているのだが,私は構造主義科学論が気にいっている.ホーキングの宇宙論を読み直していたら,科学とは何かが書かれていた.ある現象について,(1)なるべく少数の要素を用いた理論で上手く説明できること,(2)将来の予測ができること,の2点である.(1)は現象の理論化,モデル化であり,できるだけ少ない要因,要素,概念などを使って仮説を立て,研究中の現象を上手く説明できることである.この場合,余計な概念や要素は可能な限り切り捨てて,すっきりしたモデルほどよいとされる(オッカムの剃刀).万有引力の法則は,天体間に働く重力を「質量」と距離のみで説明し,さらに日食や月食などの予測ができるので,科学的理論としては優れたものであった.しかし,いくつかの観測結果と必ずしも完全には一致せず,より良く現象説明ができる相対性理論の登場により,主導的立場を譲り渡した.
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