見聞記
膀胱ガン研究に思う
吉田 修
1
1京都大学医学部泌尿器科
pp.493-496
発行日 1971年6月20日
Published Date 1971/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413201183
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ほじめに
コッホが細菌学を専攻するようになつた動機は何であつたのだろう?多くの疾病の病因は未知であつたが,細菌学により一つ一つ明らかにすることができるというはつきりした目的をはじめからもつていただろうか。いかに偉大な業績を残した人でも,その動機というものはたわいのないものが多いのではないだろうか。
前回私は,「膀胱ガンに関する疫学的研究と,臨床成績の分析をとおして膀胱ガンの治療には現在の臨床医学ではどうにもならないものが厳然として存在することを改めて認識し,更に膀胱ガンのetiologyに関する基礎的研究の重要性を臨床医学と直結した問題として再認識した。」と書いた。そこに,嘘はない。ありのままのことである。しかし,研究をはじめた動機というものは実にたわいのない,まつたく述べる価値のないものである。
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