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Ⅰ.はじめに
医療の高度化・複雑化に伴い,医療の現場は著しく変化している.看護管理者は,現場の看護が気になりながらも人員確保と病院経営への参画など眼前の課題に多くの時間を当て,思考してきた.一方,ベッドサイドでは看護師達が看護ケアを実践し,多職種と協力しながらチーム医療を推進している.現場では多職種による協働が進めば進むほど,看護職は何をするのか,看護で解決できることは何かについて,チーム内で共通理解を要する場面が増えてきている.そのようななかで,チーム医療に看護診断は活かされているのかが看護管理者に突きつけられた課題である.
ヴァージニア・ヘンダーソンは,著書『看護の基本となるもの』で次のように述べている.「…看護師は,“保健医療チーム”の承認された一員である.しかし,たとえどんなに“チーム活動”が発達し,チームの構成員がいかに多くの機能を共有しようとも,各人は自分特有の,あるいは独自の機能を持ちたいものである.チームの他のどの構成員よりも自分の方が適任である仕事が欲しいものである.働く人各人が,自分が主となって活動できる分野をはっきりとさせておきたいのは当然である」(Henderson, 1997/2006).また,看護診断は,看護師が責任をもって結果を出すための看護介入の選択根拠になるものである.
旭川医科大学病院(以下,本院)では1992年に看護診断を導入し,21年目を迎える.今日まで決して順調に経過してきたわけではないが,看護師の事例検討会や実践報告などから対象のとらえ方や看護の視点,アセスメント力がついてきていることを実感する.
病棟師長からは,「どのような観点からかかわればよいかなど,患者の反応を理解することやアセスメントする力がついてきている」,「看護診断を導入したころはコーピングや皮膚統合性の障害など聞き慣れない用語の解釈に戸惑いがあったが,今では一般的に使用されており,概念学習してきたことが役立っている」などの声が聞かれている.また,医師が会議の席で,「そのとき,看護師たちはどう看護診断し,介入していたのか」と質問するなど,少しずつではあるが看護職だけでなく,他職種にも看護診断が共通理解されてきていると実感する.徐々にではあるが,看護診断活用の「確かな手応え」を感じている.
しかし,これまで,その成果を検証し,積極的に発信してきたとはいえない.今こそチーム医療に看護診断は有効であることを臨床の立場から発信する絶好の時である.本学術大会ではチーム医療で看護診断を活用する課題と展望を考える.
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