視座
臨床試験に挑む
田仲 和宏
1
Kazuhiro TANAKA
1
1大分大学医学部先進医療科学科
pp.1192-1193
発行日 2023年10月25日
Published Date 2023/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202789
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標準治療とは,患者に真っ先に行うべき現時点で最良の治療であり,確固たるエビデンスに支えられている(はずである).質の高いエビデンスは検証的な第III相ランダム化比較試験とそのメタアナリシスによって構築される.その昔,医局の先輩に,ある疾患に対する2つの治療法の優劣について,ランダム化比較試験をやって検証すべきと意見したところ,「そんな患者が可哀想なことはできない」と否定され,根拠不明の治療を受けさせられる患者のほうが可哀想だと思った記憶がある.
その後,世の中はEBMの時代になり,ガイドラインが整備され,多くの医師がエビデンスを重視するようになったが,実際にランダム化比較試験を行うのは容易ではない.むしろ,臨床研究法の施行による縛りや試験プロトコルと同意文書の作成,倫理審査などクリアすべきハードルが上がった分,以前よりもランダム化比較試験の実施は難しくなっている.できればやらずに済ませたいところであるが,やらなければ患者に最良の治療を届けられないから,やむを得ず行うのである.したがって,立案する試験の科学的・倫理的rationaleが重要であり,患者への十分な説明と同意取得が必須となる.
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