日本看護診断学会第8回学術大会報告 看護診断と情報科学―ケアとテクノロジーの出会い
【招聘講演】
2.看護用語の国際標準―看護診断に及ぼす影響
藤村 龍子
2
Judy Ozbolt
1
1ヴァンダービルト大学
2東海大学
pp.81-90
発行日 2003年3月15日
Published Date 2003/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7004100144
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標準用語の必要性
ユダヤ教とキリスト教の聖書にはバベルの塔の物語が記されている1).聖書に登場する物語によると,はるか昔,人々はみな同じ言葉を使って話していた.ところが人間は非常に傲慢となり,自分たちの力は神に匹敵すると信じるようになった.そして,彼らは「天と地を好きなだけ行き来できるように天まで届く塔を建てよう」と話し合った.彼らは互いに協力し合って塔を建て始め,塔は日増しに高くなっていった.しかし,人間の傲慢さに神は立腹した.ある日,彼らが目覚めて塔に行くと,互いの言葉が理解できなくなっていた.全員がおのおの異なる言語を話していたのである.彼らは協力して塔の建設を行うことができなくなり,塔がそれ以上高くなることはなかった.彼らは世界中に散っていき,それぞれの地で異なる言葉が話されるようになった.
この古の伝説は,看護やヘルスケアの用語を表すメタファー(隠喩)となっている.世界の異なる地域の人々が研究や臨床相談などの目的で共同作業を行う際,会話や記述の手段として用いる“日常言語”の異なっていることが共同作業の妨げとなっている.また,同じ国や言語グループのなかでさえ,臨床事象の記録に用いる用語には相違があるため,相互にコミュニケーションする能力には限界が起きてきている.
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