連載 DV被害者に看護師ができること・2
DVが健康に及ぼす影響
友田 尋子
1
1大阪市立大学医学部看護学科
pp.597-601
発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100472
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DVがなぜ健康問題,公衆衛生問題なのか
DVによる健康障害は,身体のけがにとどまらない.むしろ,自分自身の感覚を信じる力を失い,正常な判断力や前向きに生きる力を根こそぎ奪われていくことのほうが,この問題から引き起こされる本質的な障害である.しかし,被害者自身が自分自身の健康状態の不調を暴力による影響と気づいていないことが多い.暴力が直接的原因でない症状や状態が,実はDVによる健康障害であったということも少なくない.
たとえば,長期投薬が治療上重要な意味を持つ女性患者で,服薬を怠っていると思われるケースで,実は夫が薬を与えていなかったのであり,その結果,疾患の悪化を招いていたということが実際にある.また,DV環境下のストレスがあまりに強く,薬の効果が出にくいといったことも起こる.夫が定期的な診察に行かせなかったり,診察に必要な医療費を渡さず,そのため診察に来ることができない被害者もいる.医療者側はこのような患者に出会ったとき「DVに起因した結果ではないか」と考えることは少なく,「病識の低い患者」というレッテルを貼ってしまうことが多々ある.
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