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I.はじめに
2014年末に行われた日本透析医学会統計調査委員会による全国調査(日本透析医学会統計調査委員会,2016)によると慢性透析患者数は32万人を超え,導入平均年齢は69.0歳,透析人口全体の平均年齢は67.5歳で,10年前(2004年)の,透析人口24万8,166人,導入平均年齢が65.8歳,全体平均年齢63.3歳(日本透析医学会統計調査委員会統計解析小委員会,2010)に比べると透析患者は高齢化し続けてきている.
2015年3月末の「介護保険事業状況報告全国集計年報」(厚生労働省,2015)によると全国要介護(要支援を含む)認定者数は600万人を超え,要介護認定1〜5の人数は440万人以上とされている.導入年齢の高齢化に伴い,今後ますます介護度の重い患者や認知症の患者は増加していくのではないかと推測される.
慢性腎不全患者にとって「透析は終生必要な治療」である.透析療法指導看護師の役割の1つに患者の長期療養生活を効果的に支援できることとある.また三村他(2016, p.301〜302)は,後期高齢透析患者の療養支援のあり方について,「ケアで最重要なことは,その人の意向に沿った生き方を支援することである.その人のこれまでの生き方や価値観を知ることが必要となる」「人生のなかで培われた,その人の得意としているものや能力を活用して普通の生活の中で活き活きと暮らす事ができればフレイルや要介護の状態を遅らせる事ができる」とも述べている.フレイル(葛谷他,2014)とは,要介護状態になる前の高齢者の虚弱を意味する.一方,伊丹(2016, p.93)は,「要介護の予備軍と考えるフレイルは,慢性腎臓病患者に高頻度で認められ,透析患者の約2/3,80歳以上では78.8%に認められる」こと,「QOL(quality of life,生活の質)についての調査では,高齢透析患者は同年代の一般人口に比べQOLが低いが若年者より良いことも報告されている」とも述べている.
本来「療養患者の生活の質」を評価するのであれば患者側の想いを知ることが必要である.しかし想いには多くの複雑な側面があるため,数量化する測定方法だけで評価することはできない.
そこで,本研究は,ADLが低下した血液透析患者の療養生活を評価するために,要介護認定を受けている血液透析患者を対象として,療養生活とそれに対する本人の想いを明らかにすることを目的として,自由記述(回答)を含む質問紙調査を実施した.なお,本研究においては,療養生活については日常の過ごし方,活動能力などをもとに,また本人の想いについては主観的幸福感,透析治療への想い,趣味活動への想いなどをもとに分析するものとする.
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