巻頭言
さまよえる要介護認定
佐伯 覚
1
1産業医科大学リハビリテーション医学講座
pp.105
発行日 2010年2月10日
Published Date 2010/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101697
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昨年4月に実施された介護保険要介護認定の見直し,ならびに経過措置に関する混乱は目を覆いたくなるような状況であった.私は2000年の介護保険制度発足時より認定審査会(合議体)の委員を務めており,現在は合議体長として認定審査に当たっている.今回の事態を振り返りつつ,リハビリテーション科専門医としての視点から私見を述べてみたい.
混乱の経緯は次の通りである.2009年4月,訪問調査で使用される認定調査の認定基準が変更された.すなわち,基本調査の項目群ならびに項目数が削減されるとともに,各項目の評価判定のための評価軸が新たに設けられた.従来の評価では,調査員によって“できる能力”で勘案したり,“実際にしている状況”で判断したりと基準が曖昧であったことから,今回,評価基準を明確にし,評価結果のばらつきを是正するよう整理し直したのである.しかし,この見直しによって,従来より要介護状態区分が軽度に判定される事例が大幅に増え,厚生労働省は経過措置として,更新申請者が希望する場合には,従前の要介護状態区分に戻してもよいことにしてしまった.この超法規的措置は,二次判定を行う認定審査会に大きな混乱をもたらすととともに,要介護認定に対する国民の信頼を大きく失墜させた.
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