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I.はじめに
日本透析医学会の調査によると,2016年末での透析導入患者の平均年齢は69.4歳であり,透析患者の平均年齢が68.1歳と合わせ,年々上昇傾向にあり高齢化している(日本透析医学会統計調査委員会,2017).慢性腎臓病を患う高齢者は,身体的老化に加え,心血管系,バスキュラーアクセスなどの医療的課題,精神・心理状態の変化,通院・介護などの社会的課題を抱えている.このような背景のなかで,2014年に日本透析医学会から「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセス」についての提言が発表され,終末期における透析医療のあり方について検討が開始された(日本透析医学会血液透析療法ガイドライン作成ワーキンググループ他,2014).また厚生労働省(2013)は,2025年を目途に高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を目的に,可能なかぎり住み慣れた地域で,自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しており,エンド・オブ・ライフの過ごし方が国策として取り組まれている.
今回,維持透析患者が末期がんを患い,患者の希望どおり通い慣れた透析施設で通院透析を可能なかぎり継続しながら,透析見合わせの決断を行うことができた事例を慢性疾患看護専門看護師(以下,筆者と略す)として多職種と協働し支援することができた.本事例への支援をとおして,維持透析患者がエンド・オブ・ライフ期を迎えるなか,患者・家族が地域で過ごしたいという思いを支え,透析見合わせの決断を地域医療機関を含めたチームで協働し支える重要性を学んだので報告する.
なお,今回の事例を発表するにあたっては患者と家族に同意を得て,個人が特定されないように配慮した.また,倫理的配慮に関しては研究者の所属施設の研究倫理審査委員会の承認を得た.研究助成や利益相反は存在しない.
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