第19回日本腎不全看護学会・学術集会記録 【特別講演】
2.さらなる腎移植普及を目指そう!
仲谷 達也
1
1大阪市立大学医学部附属病院泌尿器科
pp.15-21
発行日 2017年4月15日
Published Date 2017/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003200092
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はじめに
今どうして私たちは腎移植普及を目指すべきなのか?その答えはきわめて明瞭である.腎移植が透析よりも患者の生命予後を改善させ,生活の質を高めるからであり,透析よりも自然災害に強い医療であり,透析よりも医療費が安価であるからにほかならない.
これまで慢性腎不全患者での各種腎代替療法に関して,多くのコホート研究が実施された.しかし,腎移植よりも透析療法のほうが,生命予後や生活の質が良好であることを示した報告は皆無であり,この点に関して腎移植の優位性を疑う余地はもはやない.また,わが国は地震や台風などの自然災害の多い地理的条件にあるが,施設や機器,透析液の必要な透析に比べ,腎移植では維持免疫抑制剤さえ手元にあれば患者は一般健常人と同じ生活が可能であり,このような災害時への対応が透析医療よりも容易である.さらに,世界でも類をみない急速な超高齢化が進むわが国では,国民総医療費の増加が政府財政状況を圧迫し,その対応が喫緊の国家的課題となっている.腎移植の医療費は透析療法よりも低く,血液透析患者1人の医療費で安定期腎移植患者3人がカバーできる.医療費の面に加え,国民生産性の面においても,生活の質を高め,社会復帰に有利な腎移植は新たな労働力の創出が期待でき,国家財政へ貢献するところが大きいと考えられる.
腎代替療法に関して,腎移植は治療効果,安全性,経済性において他の治療法を凌駕しており,その普及・啓発を目指すことは,腎不全医療に携わる人にとってきわめて合理的な考えである.
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