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Ⅰ.はじめに
バスキュラーアクセス(以下,VAと略す)の状態は透析効率を左右し,透析患者の生命予後にかかわる重要な要因である.VA温存のためには,異常の早期発見・早期治療がきわめて重要である.しかし実際には,看護師の経験や力量の違いにより,「観察が不十分」,「初期対応が遅延」といった現状が見受けられるのも事実である.VAの異常の早期発見・早期対応のツールとして,シャントトラブルスコアリングシート(以下,STSと略す)1,2)が紹介され,臨床で応用した結果から,客観的評価ができること,予防的観点で取り組めること,VAの長期開存が期待できることなど,医学的管理面からの有用性が多く報告されている1~6).しかし臨床でSTSを用いる際は,多くの観察・アセスメントを看護師が担っているにもかかわらず,看護師自身の観察・アセスメントについては,知識や認識が向上する2,6~20) とは紹介されているものの,具体的な報告は見当たらない.そこで今回,一定期間継続してSTSを用い,看護師のシャントに関する観察・アセスメントへの影響について検証した.
介入前準備の第1段階として,地域の臨床看護師を対象に講演会を開催し,シャントトラブルの病態と治療の基本理解をはかった.第2段階では,同地域の臨床看護師を対象に研修会を開催し,シャントの観察・アセスメント方法の基本理解をはかった.また,介入研究を行うにあたり,STSには標準版がないことや,既存STSにはおのおの特徴があり,協力施設の状況に適用しにくいなどの理由から,協力施設の透析事情に応じたSTS(以下,改編STSと略す)(表1)および使用基準を作成することとした.改編STSは,既存のSTSを基盤とし,講演会や研修会の参加看護師および医師から出された意見を参考に研究者らが作成した.
この研究によって,看護師の観察・アセスメントにかかわる有用性が明らかになれば,STSは看護面においても有用なツールとして臨床実践での活用につながる.
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