【研究報告】
1.透析室において看護師が難しい患者ととらえるしくみ
犬丸 杏里
1
,
稲垣 美智子
2
1三重大学医学部看護学科
2金沢大学大学院医薬保健学総合研究科
pp.77-84
発行日 2012年11月15日
Published Date 2012/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003100491
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Ⅰ.はじめに
透析看護には,同一の患者と会う回数が多く,複雑な透析機器の管理やワンフロア多人数同時透析,エンドレスケアなどといった特徴がある1).このような環境で働く透析室看護師はストレス認知度が高く,バーンアウトに陥りやすい.その理由に,前述したような透析看護の特徴に起因した専門的知識と技術への緊張感に加え,長期透析患者に対する心理的ケアの困難さや,複雑多様な問題をかかえる透析患者との人間関係の困難さなどがあげられている2,3).また,透析患者は複雑な心理社会的問題をかかえ4),介入を拒む,ケア場面で転移・逆転移感情を起こしやすいなど,難しい患者として対応に苦慮することが多いともいわれている5,6).透析領域に限らず,一般的にケア提供者が患者を難しいととらえることは,患者に効果的な看護介入が行われにくくなると考えられている.それゆえ,難しい患者ととらえないように,あるいはとらえてはならないとの取り組みがなされ,その対策や方法を見出そうした研究がある7~9).
それにもかかわらず,透析領域においては依然,難しい患者への関心がもたれたままである.特殊な環境といわれる透析室において,看護師は難しいととらえながらも,患者になんらかの対応をしている.このような難しい患者ととらえる現象についていまだ明らかにされておらず,それを描くことは新たな試みといえる.
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