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当院では,2001年4月に「アドボカシー室」(図)を設置した1).筆者は,ソーシャルワーカー(以下SW)として,その専任職員を務め,設立から現在に至るまでかかわっている.その経験のなかで,「患者の味方」になる難しさを痛感している.
当院のアドボカシー室
当院のアドボカシー室設置の経緯には,大きくわけて2つの理由がある.
1つは,当院にはもともと苦情処理システムとして退院時アンケートと院内意見箱があり,筆者は1990年より意見箱の担当をしてきた.そのなかで,患者の意見を直接聞く必要性を痛感し,アドボカシー室を意見箱の発展型として位置づけた.もう1つは,約15年間医療SWとして,患者・家族からの相談を受けてきたが,意見を聞いてもそれに対応するシステムが存在しないために忸怩(じくじ)たる思いをし,これを何とか打破できないかと長年考えていた.SWの機能には,本来「患者の権利擁護(アドボカシー)」は含まれているはずだが,時として病院側の利益を優先せざるを得ないことがあり,十分にその機能を果たせているのか疑問に思っていた.つまり,アドボカシー室をSW機能のエンパワメントのツール(道具)として位置づけたのである1).
設置以来約2年間の相談件数は約20件である.少ないと思われるかもしれないが,当院には他に退院時アンケート(約70%の回収率)と意見箱があり3),ほとんどの意見はここに表われていると考えられる.したがって,アドボカシー室へは,そこではくみとれなかった辛辣な,そして重い意見が多く寄せられる.また,件数は患者実数であり,このなかには1人に1回2時間の面談を十数回重ねた事例も含まれている.相談の内容は,病院上層部に事の次第を伝え,謝罪,主治医の変更,システムの変更,保障の希望等,何らかの対応を希望したものが13件と過半数であった.
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