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Ⅰ.はじめに
1998年に発足した日本腎不全看護学会は今年で14年目を迎えた.この間の看護の質の保証そして専門性の確立に向けた学会の取り組みは,会員数の飛躍的な増加と,学会設立後誕生した2つの資格制度の取得者たちの活躍が示すように,その目的に向かって着実に進歩していることを実感している.本学会の特徴は,なんといっても会員の多くが臨床の実践家であり,それら実践家1人ひとりの日々の看護ケアが腎不全看護の質を保証し,専門性を支えていることであると思う.私自身も,31年前の本当に偶然ともいえる出会いから,透析クリニックに勤務し,一貫して透析看護に携わってきた.そんな実践家の1人として,今後私たちはどのような活動をしていけばよいのか私見を述べたいと思う.
さて,本学術集会のメインテーマは「見つめよう伝えよう拡げよう私の腎不全看護」である.この1つひとつの言葉にかけた思いと,本講演のテーマである「腎不全看護の専門性を見えるかたちに」とのつながりについて少し述べたい.「見つめよう」の言葉には,慢性の病いとともに生きる人への理解を再確認するということ,そして,その方たちへ私たちはどのようなケアを行い,そのケアを通じたかかわりのなかからどのような体験を学んでいるのかを1人ひとりが確認していこうという意味を込めた.「伝えよう」は,そうした個人のなかにしまい込まれた経験や体験を,どのように掘り起こし共有していくのかということを意味している.また,「拡げよう私の腎不全看護」は,臨床における優れた実践の根拠を明らかにし,新たな知を創造しようということと,同時に腎不全看護において大切に伝えたい知を共有していこうということである.そして会長講演のテーマは,こうした臨床の実践に基づく経験を明らかにしていく過程で,まだ明確なかたちの見えない彼方にある「腎不全看護の専門性」を見えるかたちにとつなげていきたいという思いを込めている.
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