第10回日本腎不全看護学会・学術集会記録 【教育講演】
4.画像診断からみた透析患者の心臓
納冨 雄一
1
1葉山ハートセンター
pp.22-23
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003100333
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背景
この20年間で,透析患者は10万人から25万人へと直線的に増加している.この透析患者のなかで,近年,毎年2万人余りの人が死亡している.死亡原因の第1位は,その25%を占める心不全であり,透析患者の心筋梗塞死がこの10年減少傾向を示しているのに,心不全死はこの10年再増加傾向にある.実はこの心筋梗塞死は心不全死全体の5%を占めるにすぎないのである.では,心不全死は何によって起こるのであろうか.
透析患者の心不全は,基礎疾患(高血圧,糖尿病,高脂血症)が招来する血管(冠動脈,大動脈,末梢動脈)の動脈硬化と心臓の圧負荷に加え,慢性維持透析が招来するCa・P・Mg代謝異常を原因とした上記血管および弁膜(特に僧帽弁,大動脈弁)の石灰化と心臓の容量負荷が原因となっている.これらは,慢性の心臓の虚血状態(いわゆる心筋梗塞とは異なる)と左心室の遠心性肥大(加えて求心性肥大;詳細後述)を引き起こしてしまい,その結果,言ってみれば,エンジンが大きいのにガソリンは来ない,また仕事量は増え続け仕事の質は悪化し続ける,いわゆる悪循環状態をつくっているのである.近代透析診療の知識は増え続け,技術は向上し続けているにもかかわらず,である.
近年,透析患者の心血管病変の関心が高まっているのは,このような背景から心不全死が再増加しているからである.
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