第10回日本腎不全看護学会・学術集会記録 【教育講演】
2.腎不全看護領域の実践知
正木 治恵
1
1千葉大学看護学部
pp.16-17
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003100331
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1998年に発足した日本腎不全看護学会は,1976年からの日本透析看護研究会,その後の日本腎不全看護研究会を経て,発展してきた.本学会のこのような歴史からも,日本の腎不全看護は,早くから臨床現場の看護師が主体となって専門性の確立に努力してきたことがうかがえる.透析看護は,他の看護領域からは特殊な領域とみなされ,一時は「透析室に看護はない」という言葉がささやかれることもあった.しかし,透析治療が日本に導入され,新たな治療状況におかれた腎不全患者に対し,1人ひとりに向き合い,少しでもよい状態にならないかと考えながら看護してきたパイオニアたちには,腎不全看護の実践経験から得られる知が積み重ねられている.
腎不全看護は,医療技術の進歩とともに変遷し,さらに医療費の確保や削減,予算管理という国の大きな経済的渦に巻き込まれる.そのなかで看護師は,その時その場の状況に応じながら,患者の希望を聞き,看護の専門知識と技術を使い,知恵を出し合い,工夫しながら実践し,看護の質向上へと導いてきた.透析機器やその治療体制への隷属が強いられる患者の悲嘆,やり場のない気持ちや攻撃を,身近で受け止めてきたのも看護師である.
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