Medical Scope
産科領域の急性腎不全
島田 信宏
1
1国際聖母病院産科
pp.63
発行日 1971年2月1日
Published Date 1971/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204080
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いろいろな手術のあとで,私たちが大変気をつけて管理している項目のひとつに尿量があります。術後に尿が沢山出たという報告に,私たらは何回となくほっと安心した経験があります。というのは,手術というひとつの大きな生体への侵襲のために,あるいは産科ショックのような多量の出血という突然な出来事のために,腎臓の機能が急におかされて,働かなくなり,尿を生産し得なくなる状態があるからなのです。こんな場合を術後急性腎不全といいます。そして,放っておくと尿毒症の病態をとり,死亡する場合もあるのです。
私たちの産科領域では,この術後急性腎不全は帝王切開をはじめとするいろいろの手術のあとで発症する可能性もありますが,それよりも実際に多くみられるのは分娩前後の大量の出血の後です。分娩後の大出血によってひき起こされた急性腎不全,すなわち無尿も,術後の急性腎不全と病態的にはほとんど同じもののようです。したがって,私たちは分娩時に出血の多かった患者や,前置胎盤や早期剥離で帝切したような症例では,たえず尿量の測定を行なう必要があります。
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