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はじめに
私は長年,慢性看護の実践,研究(少々),教育に携わってきた.
大学で教員をしながら,病棟や外来の臨床に出られるよう,所属の大学が替わるたびに,付属の病院や近隣の病院,クリニックなど,その都度,臨床の施設を替えて,個別にお願いして,定期的に週一回程度,療養相談に出させていただいてきた.その結果,糖尿病患者さんとのかかわりは,臨床看護師のときの経験も含めて40年以上になった.実践と並行して,その施設の臨床の人たち(看護師や医師,薬剤師,栄養士,理学療法士,臨床検査技師の人たち)と一緒に事例検討会を開いたり,それとは別に,赴任した大学の近隣の看護師さんたちと一緒に糖尿病看護研究会を定期的に開催したりして,仲間の人たちを増やすよう努力をしてきた.そこでは,主に事例を振り返ることや,療養指導,相談場面のプロセスレコードの分析等を参加者全員でできるようにするなど,個々の看護師や,看護師にとどまらず,糖尿病医療チームに参加している人たち,それは病院所属の人だけとはかかわらず,院外薬局の薬剤師さんや,フリーで活動している運動指導士さんなども入っていた.
そのような活動をしながら,私は日本糖尿病教育・看護学会には学会設立時からかかわらせていただいていたが,今回の学術集会で四半世紀となる学会の歩みを振り返ったとき,糖尿病患者の理解,看護実践,教育・研究はずいぶん進んだという感がある.そのうえで,今私たちに求められていることはなにかを考えたとき,20数年前に比べても,初期教育・合併症予防教育の一貫した,システマティックな患者支援が,ずいぶん進んだとか,全国的に見てもどこでもだれにでも必要な人に支援が十分提供されるようになっているとは,まだ言えないと思う.それでもフットケアや透析予防指導に関しては,専門的に学び,経験を積んだ人が外来の指導で継続的に患者さんにかかわることは,制度として軌道に乗ってきつつあると思うし,この20年で,日本糖尿病療養指導士や,ローカルの療養指導士,糖尿病認定看護師はかなり一般の人に認知されるようになってきたと思う.しかしまだまだ糖尿病にかかわっている医療者,特に看護職にある私たちの仲間も増やして,他職種の人たちとももっと連携し,もっと種々の合併症の発症予防,進展予防にもかかわっていかなければならない状況にあると考え,なお一層の努力を要する状況にあると思われる.
そうしたなかで,糖尿病発症予防,初期教育も大事であるが,それとともに合併症が進んできている状況にある人や,透析療法を受けざるを得ない(現に受けている)人や,失明した人や下肢切断をした患者さんたち,つまり「合併症を持ちつつ生きている人々」,さらにはがんを持ちつつ糖尿病も合併している人,その他糖尿病とともに,いろいろな慢性の病気を持って生活している人への支援についても今一度じっくり考えられたらと思い,このテーマにした.
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