Perspective◆展望
深刻な糖尿病合併症患者をも支援したい
赤井 裕輝
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1東北医科薬科大学医学部 内科学第二(糖尿病代謝内科学)教室
pp.657
発行日 2016年9月15日
Published Date 2016/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415200491
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糖尿病患者が長い中断の末に深刻な症状を抱え,がまんの限界を迎えてようやく受診してくることがある.一見手遅れでも,何とか機能を保って完全な障害者にならずに自宅に帰ることも少なくない.症状の出た糖尿病患者が深刻さを悟り熱心に治療に取り組んで,良好なHbA1cを保てるようになることもまた少なくない.しかし,良好なコントロールを維持しているにもかかわらず,そして眼底は光凝固し尽くされているのにもかかわらず,じわじわと視力が低下する症例もままみられる.何年もかかって眼圧がじんわりと徐々に徐々に上昇し,両眼の視力が失なわれていく患者を筆者は数人経験した.これも一種のレガシー効果であろうか.放置していたのは何年も前のことで,その後はずっと良好な血糖コントロールを維持してきたのに…….何と皮肉なことであろうか.患者さんは悟ったようにあきらめ顔であるが,内科医は悔しくて残念で仕方がない.コントロール不良は5年も10年も前のことだったのに,そしてこんなにも良好なコントロールを続けている人に,いまになってこんな深刻なことが起こるなんて…….糖尿病の合併症にはそのような側面もある.
さて,全盲になった人にはその後どんな人生が待っているのであろうか.眼科医から指導を受けるチャンスはさほど多くない.ほとんどの患者は漂流するかのようにその後の人生をあきらめており,家族も途方に暮れている.
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