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1.2型糖尿病の病態と現在の治療効果
2型糖尿病はインスリン抵抗性と膵β細胞機能異常が相まって発症する疾患である.自然史的には,まず,食事量の増加,運動不足などの生活習慣のみだれがインスリン抵抗性を引き起こす.しかし,初期にはインスリン抵抗性を代償するために膵β細胞がインスリン分泌を増加させるため,血糖値はほとんど増加しない.しかし,その後,おそらく,一部には,遺伝的な膵β細胞脆弱性のために膵β細胞がインスリン抵抗性を代償できなくなり,インスリン作用が低下し高血糖が出現する.
2型糖尿病の患者を診るにあたって,最も大きな課題は,その合併症をいかに抑制するかということである.特に血管合併症は糖尿病患者の予後とQOLを大きく悪化させる.2型糖尿病の特徴は高血糖であり,糖尿病外来では血糖コントロールに大きな時間を割くが,高血糖の是正により,血管合併症が抑制できるかという点に関する,Diabetes Control and Complications Trial/Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications(DCCT/EDIC)研究の結果は興味深い1).本研究は1型糖尿病を対象に血糖を精力的に低下させる強化療法群とそのコントロールの保存療法群の2群に分け,合併症の発症率を検討した研究である.試験開始時には合併症のない人がほとんどであったが10年間の試験の結果,血糖コントロールが細小血管障害の発症を有意に減少させることが明らかになった.しかし,10年では大血管障害の発症頻度が低すぎて,統計学的に検討できるだけの合併症発症頻度には至らなかった.そこで,この研究はその後20年間,症例が追跡され,総計30年間の観察研究がなされた.その結果が2013年に報告されたが,最初の10年間の血糖コントロールの差が,細小血管障害,大血管障害の発症,進展を約50%低下させることが明らかとなった.したがって,発症早期から,長期に観察すると,血糖コントロールは合併症の発症に大きく寄与するとことが示唆されたものと考えられた.
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