今月の主題 糖尿病
巻頭言
糖尿病診断の過去,現在,未来
富永 真琴
1
Makoto TOMINAGA
1
1山形大学医学部臨床検査医学
pp.709-710
発行日 2002年7月15日
Published Date 2002/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905135
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ライフスタイルの変化に伴い日本も含め全世界で糖尿病とその予備軍が増えている.検診などで発見される糖尿病は無自覚・無症状であることが多いが,慢性の高血糖が放置されると糖尿病に特有の網膜症,腎症などの細小血管障害性の合併症ないし糖尿病に特異的ではないが心筋梗塞や脳卒中などの大血管障害性の合併症が生じるリスクが高いことが知られている.糖尿病が増えこれらの慢性合併症が増えることは早世や身体障害の原因となるので,「健康日本21」計画でも国民の健康対策の課題・分野の1つとして取り上げられている.細小血管と大血管障害のリスクを認識すること,つまり,糖尿病診断は極めて大切である.
一般に診断に用いる検査は食事や運動などの影響を受けず安定した代謝状態を反映するとされる空腹時の採血が適切であると考えられている.食後の検査は外来などやむを得ない場合に行うという理解であった.しかし,過去の糖尿病の診断基準は事情が異なっていた.糖尿病と正常を分けるパワーは空腹時よりも一定量のブドウ糖を負荷したテスト(OGTT)の血糖値のほうが大きい.空腹時血糖値よりOGTTに重きを置かれた.負荷量としては75gが適当であり採血時間としては2時間後が適切であることが一般的に受け入れられた.
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