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1.患者教育に必要なProfessional Learning Climate
ひとは皆「自己実現」に向かって生きている.そして自分らしく輝きたいと願っていると思う.生きていく中では,楽しいことや嬉しいこと,困難事や死別などさまざまな経験をする.そしてその都度,目の前の出来事に対峙しながら生きていかなければならないのが人生ではないかと考えている.Miller(1991)は,慢性疾患は完全な治癒が望めないことから生涯にわたるセルフケアが必要とされ,そのために慢性疾患患者は希望がないという気持ちhopelessnessや自分ではどうにもならない無力感powerlessnessを抱きやすいと述べている.糖尿病は慢性疾患の代表的な病気であり,糖尿病患者は自身の健康状態をマネジメントする必要がある.生活者として,どのように病気の療養と折り合いを付けながら自分らしい人生を歩んでいくかが糖尿病患者の課題と言えよう.糖尿病看護の専門家は,そうした患者のセルフマネジメントの支援をしていくことが仕事である.
「看護の教育的関わりモデル」(図1)は,河口ら(2001,2005)が文部科学研究費の助成を受けて開発しているモデルであり,看護職者の教育実践力を高めることを目的に,熟練看護師の高度な教育実践を可視化したモデルである.このモデルは,「人は①主体的な存在である,②一人ひとりは異なっている,③自分自身で変わる存在である」という人間観に基づいている.このモデルにおいて看護職者は,患者と相互主体的に関わりあいながら,患者の生活者としての価値観を尊重し,看護の専門的能力を駆使して,生活と健康を支援する.このモデルは,「とっかかり/手がかり言動とその直感的解釈」「生活者としての事実とその意味のわかち合い」「疾患・治療に関する知識・技術の看護仕立て」「協同探索型関わり技法」「患者教育専門家として醸し出す雰囲気」の5つの概念で構成される.
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