- 有料閲覧
- 文献概要
今現在,糖尿病患者をとりまく環境はどうでしょうか.私は,小学生のときにインスリン依存型糖尿病を発症して,病歴も18年程経ちました.今は患者会の代表をしており,さまざまな形で患者会の関連行事に参加して最近感じたことがあります.毎年全国各地区の患者会などで開催されています,小児糖尿病サマーキャンプにて医療者スタッフが小・中学生の患者への注射や食事の説明に関して,「あたりまえ」「ふつう」といった言葉が多くみられました.たとえば,バイアルの混合注射をしている患者が注射液を吸い取るときに,中間型N製剤を空気も入れずに最初に吸い取っているのを見て注意し,患者の「何で?」との問に,「そんなことあたりまえだよ」と答えた医師の言葉がありました.また,食事療法のことで小学生の患者の「僕は,プリンがすごく好きだけど絶対に食べてはいけないの?」との問に,「そんなこと,ふつう考えればわかることよ」と看護婦が答えていました.もう少し患者の年齢にあった説明が必要ではないでしょうか.
患者それぞれの発症した年齢やかかりつけの病院などが違うなど,おかれている環境はいろいろと違います.健常者からは医療に携わるものは遠い存在に見えがちですが,患者からみると医療に携わる医師や看護婦などはすごく近くに感じるものです.特に看護婦などは,先生に言えないことや聞けないことを話したり,また入院などをしたときには先生より接している時間が多く,患者(患児)には大きな存在に思われます.また,現在の医療事情としてペン型注射器の発売,強化インスリン療法への移行,簡易型血糖測定器などの医療技術面のハード的な部分は日々進歩していると思いますが,相対する患者側の事情としては,必ずしも同じ環境とはいえないと思います.実際に小・中学校,高校の一部では,学校生活のなかに糖尿病(注射・血糖測定など)を持ち込めないところがいまだにあります.これは大きな問題で,特に昼食前の注射ができないことなどが挙げられます.これと同様に,患者または家族の都合で引っ越しをすると,移動先での新しい病院,クリニックなどの対応に大きな差があることが多く,医療者間での格差も患者にとっては大きな問題です.このような問題に対して第1に患者の強い意思も必要ですが,きちんとした理解や治療を得るための環境改善には,家族や医師・看護婦などの医療関係者の皆さんの協力がたいへん必要だと思います.
Copyright © 2000, Japan Academy of Diabetes Education and Nursing. All rights reserved.