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はじめに
糖尿病をもつ人々が日常生活における管理の仕方を学ぶためには,専門家からの教育的アプローチが重要な役割を果たしている.わが国の糖尿病患者教育は,教育入院,糖尿病教室など多種多様な形で,多くの保健医療機関において実施されている.1961年にその初版が発行された日本糖尿病学会編『糖尿病治療の手びき』をはじめとして,現在では何十種類もの患者用の教科書・解説書が発行され,主に知識の普及を中心として,患者教育に貢献してきた.欧米では1980年代に入り,糖尿病患者教育の評価に関する研究が数多く実施されている(Brown, 1990).全般的に患者教育の有効性は支持されているが,知識・技術指導の限界が明らかとなり,最近では,患者の認知機能に働きかける自己効力・問題解決技能あるいは患者-ケア提供者の相互作用などに焦点が移りつつある(Glasgow, Osteen, 1992).わが国においては,食事指導などについていくつかの新しい試み(岸・神谷・尾崎, 1986; 井芹, 1988; 菅野, 1990)はみられるが,その効果は十分検討されていない.
家庭で糖尿病を管理していくことは,指示された治療法を1人1人の日常生活に組み入れるという非常に複雑な仕事であり,生活全体の調整を必要とする(吉田・河口・川田, 1990).そのためには,患者の生活全体を視野に入れて自己管理を促進するような教育的アプローチが必要であり,患者教育の方向転換が模索されている.行動との関連で,特に注目されるのは“自己効力(self-efficacy)”である.自己効力は Banduraの社会的学習理論のなかで規定された,人間の認知的な働きを示す概念の1つで「ある特定の行動を効果的に遂行できるという確信」として定義されている(Bandura, 1977).
そこで本研究では,糖尿病をもつ人々の自己管理への主体的な取り組みは,専門家の適切な指導を通して,患者が遂行できるという確信をもつことにより促進されるという考え方に基づいて,自己効力の強化につながるような看護介入を組み込んだ糖尿病患者教育プログラムを作成し,その効果を検討したいと考える.本稿では,教育プログラムの作成および教育方法の評価を中心に報告する.
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