Japanese
English
- 販売していません
- Abstract 文献概要
- サイト内被引用 Cited by
看護師の多くは看護倫理が難しいと言う。中に入ろうにも入り口が分からず、また、その中に踏み込んだら、すぐに迷子になりそうなシャーウッドの森(ロビンフッドの伝説で知られる)のようにとらえているのかもしれない。しかし、どんな森にも道はあり、努力して先に進めば、その奥には古くからこの問題に取り組んできた先人らが残した看護倫理の原則、問題解決の枠組などの「道具/鍵」が見つかるはずである。そして、それは看護・医療の倫理的問題により望ましい答えをもたらしてくれる。そんな森の存在をほとんどの看護師が知っていると思う。ときどき覗いているかもしれない。しかし、踏み込むことをためらっている。ならば、その森の入り口に、倫理的感受性「もどき」という「道具/鍵」を置いてみてはどうだろう。
倫理的感受性とは、理論と原則の知識をもとに価値や価値の対立を認識する能力、および、道徳的、倫理的な問題を同定する能力を言う。それは、厚労省が看護基礎教育の充実に関する検討会報告書(2007)の中で示している、看護師として倫理観や責任感、豊かな人間性および人権を尊重する意識につながる医療者としての大切な能力、資質である。多くの看護師は、倫理的な問題の存在は感じることができるだろう。しかし、それは上記の定義で求められる能力までには達していないと思われる。そもそも感受性の育成には、一人一人の性格特性、意識や理解力などが影響すると考えられ、机上教育や演習などを積み重ねても、もともと苦手な人はなかなか身につけることが難しい。例えば、バラが美しいことに異論を唱える人はいないと思う。だが、どうして美しいと感じるかは、人それぞれの感性の問題であり、中にはバラが好きではない人もいる。さらに、トゲを刺して痛い思いをした人は、バラの美しさに心を動かされる前に、バラのトゲに目を向けてしまうかもしれない。「なぜ、バラが美しいか答えなさい」と言われても、戸惑うだけだろう。感受性は人それぞれである。それを磨く、育むというのは一筋縄ではいかない。倫理的感受性についても同じである。
Copyright © 2016, The Japan Nursing Ethics Associatin. All rights reserved.