■特集 作業療法の倫理を問う
倫理の概念と作業療法との関係
三浦 秀春
1
1弘前大学医学部保健学科
pp.201-205
発行日 2002年6月15日
Published Date 2002/6/15
- 販売していません
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
「倫理」といえば,「人の道としての善悪」といった具合に,誰しもが心得ているものである.しかし何が「人の道」であり,どのようなことが「善し悪し」なのかということになると,必ずしも一義的ではない.ニューヨークの世界貿易センタービルへの「テロ」の例でもわかる通り,「倫理」は時代や社会により,また国や風土,状況や立場によって,その基準や内容理解が異なっている.
特に現代は,これまでの知の枠組みや行動の基準では間に合わなくなってきている面があり,我々は人生の意味の上でも社会生活の中でも,正直なところ不安と動揺に晒されている.逆にその分,「哲学」や「倫理」への見直しや依拠願望,或いは,新たな知のパラダイムや「倫理」を創出することへの要望が強いといえる.
昨今の医学・医療上における「ウロボロス」的といっていい倫理的課題は,現代の自家撞着的状況の象徴であり,「遺伝子治療」や「クローン人間」にまで進んだ知的開発や技術的進歩に伴い,人間の「精神」のあり方や「人生の意味」が問い直されているといわなければならない.
ここでは,「倫理」の基本的概念をおさらいして,作業療法上の倫理に生かしていただける点に触れてみたいと思う.
Copyright © 2002, Japanese Association of Occupational Therapists. All rights reserved.