講座 理学療法(士)と倫理・1【新連載】
倫理とは何か―関係性が支える倫理感覚
田中 智志
1,2
Satoshi Tanaka
1,2
1山梨学院大学大学院
2山梨学院大学附属小学校
pp.69-74
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101592
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はじめに
「倫理」は,道徳規範と同一視されることが多いが,時に道徳規範からずれる衝迫的な感覚でもある.この感覚としての倫理(倫理感覚)は,心情的な関係性によって喚起され,合理性や道徳規範によって妨げられるが,そうした合理性や道徳規範を退けるくらいの敢然性を秘めている.その意味で倫理感覚は,予想ではなく,希望につらなる.予想は技術的合理性を前提にするが,希望は技術的合理性を超越するからである.この希望が,人が欠点,疾病,障害をかかえながらも幸福に生きるための礎となる.そして,この希望を創りだすものが,無条件の愛(存在論的関係性)を基調とする家族であり,それを拡げるのが,人が人を支え,かけがえのない一命を畏れ敬う共生社会である.
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