◆特集 作業療法の守備範囲
精神科作業療法の領域—臨床と研究の接点から
関 昌家
1
1金沢大学医療技術短期大学部
pp.10-15
発行日 1987年2月15日
Published Date 1987/2/15
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はじめに
今日,作業療法士を取り巻く状況は,なんとはなしに厳しい状況のようである。その一つには医療の分野で少しずつではあるが,作業療法士の職務が狭められようとしている感じがするからである。
一例を上げると身体障害系の病院に作業療法士の就職をお願いすると理学療法士が先に欲しいと言われることがよくある。理由は理学療法士がいないと作業療法の診療請求が出来ないと思い込んでいることである。即ち作業療法は独立した職種ではなく理学療法の一部であるように認識されている部分がある。この原因の一つは健康保健法の中では,作業療法は「理学療法」の中に記されていることにある。同様に精神障害系でも,基準看護が取れないと,作業療法が認可されない。そこで作業療法士を採用しても診療請求ができないからと,なかなか採用してもらえず職場が拡大しない。さらにデイケアも思ったほどに患者が来ないので,看護者を講習会に行かせて,職員の定員を増加させないで,逆に合理化を計りながら医療の枠を広げつつある施設が多い。
この現状を踏まえて作業療法の広がりを考える必要があり,現実は決してバラ色ではない。第19,20作業療法学会で村田1)が精神分裂病者の職業意識について報告したが,職業に衰退があり,社会情勢に対応して新しい職業が登場し,また消失している。医療の分野でも,様々の職種が発展,解消している。医療の分野での変革は医学の進渉と病気の広がりによる技術的な変革で,作業療法もその例外ではない。そうであるなら作業療法の基本を明確にして話しを進めないと,さらなる進展を述べることが難しくなるので,作業療法の基本となる考えを,筆者なりに考えて見ることから始める。
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