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Ⅰ.はじめに
都庁へ就職して12年間の内7年を福祉事務所のケースワーカーという通称で過ごした.正式には地区担当員と言い,子供から老人まで福祉と名の付くものは何でもやった.5法ワーカーと呼ばれた.後に専門化して生活保護と保育園の入所審査のみとなったが.このような仕事に就けるのは大学で心理学の単位を取っているから,と言われた.本人は何の自覚も知識も無く,与えられた仕事を先輩の助言を頼りにこなした.残りの5年は中枢にいたり出先機関にいたりしたが,福祉から離れることは無かった.この経験は「生活」というものの実態を,その破綻した姿から知ることになり,人生の見かたをきわめて悲観的にした.もう一つは法律と行政機構の動かし難い現実と限界を,底辺の人々への処遇という差し迫った状況の中で思い知らされた.これも自分のペッシミズムに拍車をかけた.
必然的に私のOTは家庭や社会を最初から念頭においた援助となった.地域リハビリテーションが叫ばれて,この姿勢は当然のようになり,私は自分の当然のラインを歩めば良いというお墨付きを得たようなものである.リハビリテーションの理念と方法―この二つをソーシャルワーカー(以下SWと略)の経験で得た.これは大学の教育で得たのでは決してなく,実務経験の中から体得したものである.このテーマを与えられてSWについて何も知らなかったことがわかったので,勉強するつもりでいくつか文献を読んだので紹介したい.何事もむだな経験というものは無いものである.ついでに言えばOTRになって人の喜ぶ姿を素直に受け止めることができるようになり,どうしようも無い現実もそのまま受け止められるようになったが,これは年のせいであろう.
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