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はじめに
再生医療との併用の観点からリハビリテーションを捉える学問領域は,再生リハビリテーション(regenerative rehabilitation)と呼ばれる.AmbrosioとRusselが2010年に提唱した概念で,「組織の再生,リモデリング,修復の促進を通じた機能回復の最適化のために,再生医療の治療の枠組みに,リハビリテーションのプロトコルおよび原理を適応すること」と定義されている1, 2).
Tashiroら3)は,神経再生医療におけるリハビリテーションの役割を,地ならし,機能訓練,運動療法の3つに整理している.地ならしとはreconditioningであり,受傷後の廃用症候群による細胞移植への治療反応性低下を緩和させる.誘導された新生神経・軸索はnaiveな状態では上手に働くことはできず,宿主の神経システムとの有機的な統合が必須であるが,機能訓練は機能的なシナプスや神経回路を選択的に強化し,そうでないものを相対的に退縮させる.運動療法は,種々の神経栄養因子の分泌を促すことであたかも薬剤治療のように作用し,移植細胞の生着の促進,神経細胞や希突起膠細胞への分化の促進,未分化細胞の減少といった移植片自体への効果,脳皮質や脊髄神経回路の可塑性の増強,急性期の抗炎症作用や神経保護作用など,多岐にわたる効果を発揮する.同様の所見は物理療法でも報告されている4)(図1).高い神経可塑性を治療につなげる再生医療は,われわれリハビリテーション科がもっている「運動療法」や「機能訓練」,「物理療法」といった治療手段を,最も効果的に機能回復という成果につなげられる土俵であるともいえる.
本塾では,整形外科学教室,生理学教室,そしてリハビリテーション医学教室の共同研究で,脊髄損傷に対する神経幹前駆細胞移植を対象とした再生リハビリテーションの研究を進めている.科の垣根を越えた研究体制を採っており,最近開発・上梓した過負荷の原理を応用したマウスの四足トレッドミル歩行訓練プロトコルは,整形外科大学院生によるものである5).
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