リハニュース【Topics】
脊髄損傷の再生医療とリハビリテーション(1) 脊髄損傷の再生医療の歴史的背景
田代 祥一
1,2
1慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
2コペンハーゲン大学附属デンマークMR研究センター
pp.629-631
発行日 2017年8月18日
Published Date 2017/8/18
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はじめに
脊髄損傷(脊損)の再生医療について次号にかけて概説する.本項ではまず総論をまとめ,次項ではリハビリテーションとの併用に関して述べる.
脊損に対する細胞移植療法は,胎児脳組織やES細胞由来の神経幹前駆細胞(neural stem/progenitor cell:NS/PC)移植による運動機能回復の報告をさきがけとして隆盛してきた.わが国では余剰胚や中絶胎児の組織の利用は倫理的側面から臨床応用は許容されないため,人工多能性幹(induced pluripotent stem:iPS)細胞が大きな期待を集めている.われわれは京都大学との共同研究で,マウス亜急性期脊損モデルへのヒトiPS細胞由来NS/PC移植を行い,運動機能回復の促進,運動誘発電位の改善,必要な神経系細胞への分化,ドナー細胞とレシピエント細胞間でのシナプス形成などの種々の有効性を示す所見を報告し,臨床治験を開始する準備を進めている1).この他の細胞種としては,骨髄間質細胞(bone-marrow stem cell:BMSC)や嗅粘膜細胞などが注目されている.前者は特に高い間接効果(後述)が,後者は軸索再生の誘導や再髄鞘化などが報告されている.いずれも自己骨髄幹細胞移植や同種骨髄間質細胞から樹立された細胞製剤,自家嗅粘膜移植といった形ですでに治験のレベルまで実用化が進められている.
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