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リハビリテーション医学の中で,評価はきわめて重要な意味をもっている.評価を行うことはまずは現状を把握することであり,ぼんやりとみえていた臨床初見がはっきりと可視化できるようになる.数値化もしくはグラフ化することで,絶対的な障害の程度がわかり,定期的に評価を行うことで患者個人の相対的な変化も知ることができる.リハビリテーション治療の効果があるかどうかも,まずは正しい評価が行われなければその効果判定は不可能である.そのために,リハビリテーション治療の発展は,優れた評価法,正しい評価法が不可欠である.
ここでわれわれが注目したのは,半側空間無視である.半側空間無視は,大脳半球病巣と反対側の刺激に対する注意が障害される病態であり,しばしばリハビリテーション治療を行ううえでの障壁となる.特に右半球に病巣を有する患者に多く,約40〜50%の患者にみられ,劣位半球の頭頂葉,側頭葉,前頭皮質,皮質下核の障害で生じるとされる.半側空間無視に対する従来の机上検査として,線分二等分試験,線分抹消試験,そして模写試験などが知られており,これら従来の検査を標準化し,半側空間無視の評価バッテリーとしたBehavior Inattention Test(BIT)1)があり,本邦ではBIT日本版(通常検査・行動検査)2)として日常臨床で広く使用されている.BIT日本版(通常検査)は,得点が低くなるに従い左側への見落としが増えるため,半側空間無視を検出するための評価として妥当であることが報告されている3).しかし,BITをはじめ,半側空間無視に対する従来の評価は机上で行われるため,紙面上での半側空間無視を検出することは可能であっても,空間認知の障害の評価として限界があると考えられる4).身体を中心とした空間は,自己が占める空間(personal space)と身体近傍空間(peripersonal space)5, 6),そして身体外空間(extrapersonal space)の3つに分けられ,机上課題は身体近傍空間のみの評価であり,それより遠い身体外空間における半側空間無視を評価しているとはいえない.身体外空間における半側空間無視を評価する報告はいくつかあるが7-10),身体近傍空間と身体外空間における半側空間無視は,異なる病態であると考えられる.
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