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総務省が公表している2019年の人口推計によると,山口県は65歳以上の高齢者が34.3%を占め,高齢化率では秋田県,高知県に次ぐ全国第3位であり,全国より10年早く高齢化が進んでいるといわれている1).すなわち,高齢者の要介護(要支援)認定者の増加が見込まれる中,介護・支援状態の重度化を防止し自立した日常生活を維持するために,適切な時期に効果的な整形外科手術や運動器リハビリテーションを行う必要がある.そのような社会的背景の中,山口大学医学部附属病院リハビリテーション部では,運動器疾患,特に大関節(股関節,膝関節,肩関節)の術後リハビリテーション医療に関する研究を行っており,本稿ではその一部を紹介する.
まず,股関節については,CT-based navigationを使用した骨盤骨切り術や人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)前後における,hip spine alignment・身体活動量2)・自覚的脚長差・股関節周囲筋力・歩容・関節不安定性の経時的変化について調査している.THAは疼痛と機能の改善が得られる優れた術式であるが,Forgotten Joint Score評価3)において必ずしも満足な点数とならない症例も存在し,前述した個々の因子と患者満足度の関連について研究を行い,患者にとって画一的なゴールを目標とすべきではなく,各々の症例にとって個々のゴールを設定すべきと考えて臨床研究を行っている.歩数を例にとると,THA術前に1日平均100歩程度の症例もあれば4,000歩の症例もあり,ほとんどの症例において,術後2〜3カ月で術前より改善していることを確認しているが,術前100歩/日程度の症例であれば,2,000〜4,000歩/日を実現できれば日常生活動作は十分に可能で,患者満足度も高いことを確認しており,THA全例で術後の目標値を8,000〜10,000歩/日とする必要はないと考えている.また,術後歩容改善については患者の関心の高い項目であるが,どの程度改善が見込めるか,どのくらいの期間が必要になるか,術前CTにおける筋の体積やCT値を含めてAIを用いて検証し,術前に個々の患者に提示できるようなシステム構築をめざしている(図1).
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