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3年前のことであるが,当院のリハビリテーション病棟の看護師長が,病棟の新たなスローガンをつくったから聞いてほしいという.私が尋ねると,「訪れた誰もが来てよかったと思える病棟をめざします」に皆で話し合って決めたとのことである.私は,それはよい,患者さんやご家族が満足して退院することはいちばん大事,と答えた.すると,それだけではない,“訪れた誰も”というのは,お見舞いの方や,日々働く職員,そして研修医や学生も含めてなのだと誇らしげである.確かに当病棟では,短期間にリハビリテーション医療の研修を行う医療人や,臨床実習でローテートするリハビリテーション関連職種を含む医系学生などが年間延べ約2,000人訪れる.このリハビリテーション医学教育,研修に十分に応えることも,われわれの使命である.
リハビリテーション病棟には,老若男女さまざまな人生経験,体験を経た患者さんがさまざまな障害を抱えて入院する.患者さん同士がお互いに訓練に励む姿をみたり,体験談を通じて,訓練への意欲が向上したり,障害の受容やゴール達成につながったりすることはよく経験する.その他にも,患者さんの表情や日常生活活動が一変することがある.それは,臨床実習のための医系学生が担当するときである.例えば,それまで食思の低下していた患者さんの摂食量が増える,訓練にも積極的に参加するなどである.学生はもちろん知識や経験はまだ浅く,機能回復訓練やADLなど学んでいる状況なのだが,共有する時間が長く真摯に対応する学生には力がある.患者さんにとってみれば医学教育にご理解,ご協力いただいたうえでのことであるが,自分の若いときや近親者と重ねたり,学生の頑張りや応援に触発されたりもあるかも知れない.
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