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はじめに
理学療法分野での臨床実習のあり方については過去にもさまざまな議論がなされており,多くの理学療法士にとって関心の高い内容であろう.2018年10月に理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則が改正され,理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドライン(以下,ガイドライン)での臨床実習の教育目標は「社会的ニーズの多様化に対応した臨床的観察力・分析力を養うとともに,治療計画立案能力・実践能力を身につける.各障害,各病期,各年齢層を偏りなく対応できる能力を培う.また,チームの一員として連携の方法を習得し,責任と自覚を培う」1)となり,限られた期間でさまざまな経験を積んでいく必要がある.ガイドラインでは実習施設に関する事項として「評価実習と総合臨床実習については,実習生が診療チームの一員として加わり,臨床実習指導者の指導・監督の下で行う診療参加型臨床実習が望ましいこと」としており,2020年4月入学生から適用される予定である1).
一方,多くの臨床現場では実習生が特定の患者を担当する患者担当型実習が行われており,2017年の学生・卒業生を対象としたアンケート調査では,約8割が患者担当型実習を経験したと回答している2).従来の患者担当型実習の問題点として,現実味の欠けたレポート中心の指導に偏りやすい,患者の利益を損なう可能性が高いことが挙げられたほか,レポート添削のため時間外労働が増えるなど,指導者にも実習生にも負担がかかるとされており3),有用かつ効率のよい臨床実習のあり方として診療参加型臨床実習が求められている.
診療参加型臨床実習は医学教育で既に導入されており,クリニカルクラークシップ(clinical clerkship:CCS)実習とも称される.具体的には,学生が診療チームの一員として診療業務を分担しながら,職業的な知識・思考法・技能・態度の基本的な内容を学習し,実際の診療業務に必要とされる思考力(臨床推論)・対応力などを養うことを目的とした実習形態である4).しかし理学療法分野でのCCS実習に関して「実習生の診療への参加」が重要視されているものの,具体的な実施方法についてはさまざまな解釈が存在し統一的な見解がなく5),具体的な報告例もあまり多くない.そこで本稿では,東京大学医学部附属病院(以下,当院)で試みている臨床実習方法を紹介し,臨床現場にて安全かつ効果的で実践しやすいCCS実習体制について検討する.
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