巻頭言
障害者への生活期リハビリテーション医療の挑戦
緒方 徹
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1国立障害者リハビリテーションセンター障害者健康増進・運動医科学支援センター
pp.1002
発行日 2020年11月18日
Published Date 2020/11/18
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- 文献概要
私はもともと整形外科教室に入局しており,障害者に対するリハビリテーション医療を意識するようになったのは大学院およびそれ以降かかわることになった脊髄損傷に関する基礎研究がきっかけだった.それまでマウスの脊損モデルを中心に扱っていたので,研究をしていた国立障害者リハビリテーションセンターで慢性期の脊髄損傷者を診察するようになったときは新鮮な驚きを感じた.やがて,そこで慢性期障害者の健康増進というテーマにめぐり逢うこととなる.
慢性期の障害者の中でも私が接する機会が多いのは肢体不自由障害の患者さんで,その経過はさまざまだが20年以上の経過をもつ方も少なくない.自立度もいろいろだが,生活をしていくご本人(と介助者)のたくましさに感銘を受けるとともに,その経過にかかわってきた多くの医療者の足跡に触れる感覚もある.慢性期は機能を維持することが重要となり,一般の運動器疾患の患者さんに適度な運動が推奨されるのと同様,慢性期の肢体不自由者にも活動性の維持は,加齢とともに進む体力の低下に抗するためには必須の課題となっている.しかし,これがなかなか難しい.具体的に指導しようとしても身体機能や社会環境に制約が多すぎて現実的な解決法を提案することができないことも多くある.
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