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- 文献概要
世界中で新型コロナウイルスが猛威を奮っています.第1波が過ぎ去ったと思うまもなく,第2波による患者増加,感染拡大が現在も続いています.日々医療の最前線で患者さんの治療に尽力されている医療従事者の皆様に,深く感謝を申し上げます.また,罹患されたすべての方々が1日も早く回復されるようお祈り申し上げます.この原稿が掲載される頃には,少しでも終息に向かっていることを願ってやみません.
さて,私の趣味は読書です.今まで多くの本を読んできた中で,一番心に残ったのは,山本周五郎著『樅ノ木は残った』です.これは,江戸時代前期に仙台藩伊達家で起こったお家騒動を題材としており,原田家当主原田甲斐宗輔が江戸幕府による取り潰しから藩を守るために尽力した物語です.確か,最初に読んだのは中学3年頃だったかと思います.中学生にとっては,難しい表現も多く,読み終えるまでに時間がかかりましたが,読み終えたときには,主人公の生き様に感動し,涙が止まりませんでした.しかし,読んで数年経ったときに,実はこの物語は作家の創作であり,歴史上,原田甲斐宗輔は伊達騒動の当事者の1人であり,悪人とされていることを知りました.1660年仙台藩では主君の伊達綱宗が逼塞となり,嫡子の伊達綱村が伊達家当主となりましたが,綱村は2歳と幼少だったため後見として伊達宗勝が命ぜられました.その宗勝と対立していた伊達宗重が宗勝らの専横を江戸幕府に上訴すると,1671年3月27日,宗輔は幕府の評定を受けるため,他5人の仙台藩家臣と騒動解決を目的として大老・酒井忠清邸に召喚されました.その評定の席で,劣勢となった宗輔は,同じく召喚されて来ていた伊達宗重をその場で斬殺し,さらに宗重派の柴田朝意と斬りあって傷を負い死亡したということになっています.この事実を知ったときに,同じ人生,同じ人間でも見方を変えるとまったく見え方が違うのだということを知り,「人をみる」ことの難しさを学びました.
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