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今年の日本リハビリテーション医学会学術集会で,「リハビリテーション科卒後教育の課題〜新専門医制度に向けて〜」のタイトルでお話しさせていただく機会を得て,あらためて日本リハビリテーション医学会における卒後教育の歴史を振り返り,関連する情報を調べた.1963年に設立された本医学会は,大学などにおけるリハビリテーションに関する卒後教育の不十分さを認識し,1975年から卒後医師研修会を開催した.1980年には専門医,認定医の制度が開始されている.その後,研修会などは徐々に充実し,また専門医,認定医制度は時代と共に変化したが,現在専門医は2,200名を超え,今後も増加することが見込まれる.最近の調査では,専門医試験受験者の8割が10年以上の医師経験をもつことから,他科からの転向が多いことは明らかであるが,周囲を見渡すと初期臨床研修終了後にリハビリテーション科医を目指す若手が多くなっているのも事実である.受験者の3割が女性であり,若い学会員ほど女性の比率が高いことから,今後も女性受験者が増えていくであろう.つまり,これからのリハビリテーション科卒後教育には,ますます多様性に対応した取り組みが必要になる.
このような状況の中,来年度から新専門医制度がスタートする予定になっている.研修プログラム制を基本とするが,一定の条件を満たす医師は研修カリキュラム制を選択することもできる.研修プログラム制では,基幹研修施設,回復期リハビリテーション病棟での研修を義務づけている.関連施設として指導医が勤務しない医療機関などでの研修も可能で,地域医療の経験などへの活用が期待される.これらをうまく活用することで,リハビリテーションの各相(急性期・回復期・生活期),疾患分野(神経系,運動器系,など)にわたる幅広い研修を専攻医に提供することができる.しかし,ここで大事なのは,「専攻医に漫然とルーチンの仕事をさせているだけでは不十分」ということである.これではリハビリテーション医学・医療の魅力が専攻医に伝わらないし,その専攻医が将来指導医になっても,専攻医に魅力を伝えることができないであろう.指導医,特にプログラム責任者は,専攻医の多様性に配慮しつつ,プログラムを工夫して多くの経験を専攻医にさせるように配慮すべきである.プログラム内でできないことは各種研修会など外部を頼ることも必要であり,医学会で充実を目指している教育コンテンツ(テキストやe-learningなど)も活用していただきたい.
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