連載 高次脳機能障害に対する認知リハビリテーションの技術・第12回【最終回】
障害と自己の意味を継続的に更新する失語症の事例—20年にわたる語りの変遷から
能智 正博
1
1東京大学大学院教育学研究科
キーワード:
失語症
,
語り
,
リカバリー
,
主体性/共同性
,
生成継承性
Keyword:
失語症
,
語り
,
リカバリー
,
主体性/共同性
,
生成継承性
pp.941-944
発行日 2016年12月18日
Published Date 2016/12/18
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はじめに
近年,認知行動療法の領域でも「語り(narrative)」への注目がなされ,脳損傷者の理解や援助実践においてもその応用が検討され始めている1).語りとは,体験の表現であるとともに体験を作りだす行為でもある2).後天性の障害の場合,自己をネガティヴに意味付け,スティグマを付与するような語りのもとで自らの活動を萎縮させてしまう例がしばしば見受けられる一方,自己語りの変化に伴って生活への姿勢が改善する可能性も示されている3).しかし脳損傷者において,どのような語りがどのように当事者の生を支えるのかはまだ明確ではない.本稿では,職場復帰はかなわなかったものの比較的適応的に日々を暮らしていると見なされてきた失語症事例の語りを報告し,何がその適応を支えたのか,長期にわたりそれがどう変化したか,その背景要因も含めて考察を加える.
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