連載 高次脳機能障害に対する認知リハビリテーションの技術・第4回
着衣障害と障害の気づきに対する適応的アプローチによって福祉的就労に至った低酸素脳症例—認知行動療法の理論を利用して
山本 正浩
1
,
浦上 裕子
2
,
中川 雅樹
1
,
大嶋 伸雄
3
1国立障害者リハビリテーションセンター病院リハビリテーション部
2国立障害者リハビリテーションセンター病院第一診療部
3首都大学東京大学院人間健康科学研究科
キーワード:
高次脳機能障害
,
作業療法
,
低酸素脳症
,
着衣障害
,
障害の自己認識
Keyword:
高次脳機能障害
,
作業療法
,
低酸素脳症
,
着衣障害
,
障害の自己認識
pp.324-327
発行日 2016年4月18日
Published Date 2016/4/18
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はじめに
救命救急医療の発展に伴い心肺停止後の蘇生率は向上したが,蘇生後脳症としての低酸素脳症は重度の多彩な後遺症が残る場合が多く,その回復は一般的に脳外傷と比べて緩慢である.機能回復過程では,障害を客観的に認識することができず,逆に障害に気がつくことで,不安や抑うつ気分が増強し,適切な行動を遂行できなくなる場合がある1).
今回,われわれは,心筋梗塞による心肺停止後に蘇生され,低酸素脳症をきたし,機能回復の過程で,障害を客観的に認識することができないまま「仕事ができる」と主張する一方,できないということを体験することで不安や抑うつ気分を訴えた症例を経験した.多専門職種による医学的リハビリテーション(以下,リハ)の中で,作業療法(以下,OT)部門では,標準的な認知訓練2)に加えて,こうした障害を「患者自身がどう感じているか?」ということに焦点を置き,気づきを促し,適応的な考えをもって目標達成に向けた行動に至るようにはたらきかけた.適応的思考に至る経過について考察を加えて報告する.
本報告に関して患者本人ならびにご家族に内容の把握や個人情報の保護について文書で説明し,書面で同意を得,国立障害者リハビリテーションセンター倫理審査委員会の承認を得た.
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